物流2024年問題のニュース等で「物流クライシス」という言葉を聞いた事がある方は多いでしょう。
本記事では現役トラックドライバーである私が、物流クライシスについて解説していきます。
よくテレビ等のメディアでは物流の2024年問題を取り上げる時に、荷物がなかなか届かなくなる例として「ネット通販で買った物がすぐ届かなくなる」といった様に宅配ばかりに焦点を当てていますが、実を言うと宅配の割合は物流全体から見れば10%もありません。
(以下参照)
宅配は総輸送量の7%以下
世間はトラックドライバーと聞くと、玄関前で対峙する「宅配の配達員」を真っ先に想起しがちだ。が、実は日本の物流業において「宅配」の割合はごくごくわずかでしかない。
直接的な宅配ドライバーの数を示すオープンデータは見つからないが、令和3年度分の「自動車輸送統計年報」を見ると、営業トラックの輸送総量は約26億トン。そのうち宅配を含む「取り合せ品」は1億8千万トンで、その割合はわずか7%だ。
特にネット通販の個人購入の場合は仮にすぐに商品が届かなくなったとしてもあまり大きな問題にはなりません。
物流が回らないと本当に困るのは企業間配送です。企業間配送が滞れば日本経済全体に悪影響を及ぼしてしまいます。
トラックドライバー不足というのは運送業(物流業)以外の方でも決して他人事ではありません。
これから物流クライシスになるとどの様になるのか解説していきます。
企業間配送で物流クライシスになった場合
先述した様に物流の大部分を占めるのは企業間配送です。
企業間配送で物流クライシスになった場合、身近な例を挙げると以下の事が起こると考えられます。
具体的に説明していきます。
満足に物を買えなくなる
物流が正常に機能していると、コンビニやスーパー等の店舗の棚には当たり前の様に商品が並んでいるので、その中から自分が好きな物を選べるでしょう。
物流クライシスになると店舗には商品がスカスカとなり、買いたい物(必要な物)が満足に買えないという状態になります。
店舗の商品がスカスカの状態はあまり想像つかないと思いますが、東日本大震災の時に一部の地域ではまさにその状態になった事がありました。
実際に私も体験したので、東日本大震災の時にどこの店舗の商品もスカスカな状態で、どの様になっていたのか紹介します。
東日本大震災の時は、今ほどトラックドライバーの人手不足が深刻ではなかったので店舗には本震から1ヵ月もかからないうちに欠品状態は回復しましたが、物流クライシスが本格化した時に大災害が起こると復旧までかなり時間がかかる事は容易に想像出来るでしょう。
少し極端な例を挙げましたが、物流クライシスになると店舗には商品が少なくなり、買いたい物(必要な物)が満足に買えないという状態になります。
多くの業種で仕事にならなくなり失業者が増える
物流クライシスになると特に有形商品を取り扱う企業はほとんど仕事にならなくなります。
製造業を例に挙げると以下の様になってしまいます。
企業間配送が滞ると・・・
- 材料が届かない
→物を作れないから人が余る - 作った物を出荷できない
→場所を取られて新しい物を作れない
→売上を立てれない
結果として納期がかかる様になり売上も立たなくなるので会社の経営が厳しくなり失業者が増える。
製造業だけに限った話ではありませんが、ほとんどの業種では必要な物が必要な所にあって初めて仕事が成り立ちます。
そこで物流が滞ると「必要な時に必要な物が無い」「出荷したい物を出荷できない」「人がいても物を造れない、売れない」となり会社としての経営が成り立たなくなり失業者が増えてしまいます。
物流クライシスが深刻化するのはいつから?
「物流クライシスが深刻化するのはいつから?」と思っている方も多いでしょう。
結論として物流クライシスは2030年以降から年々と深刻化するのは容易に想像出来ます。
(以下参照)
画像引用元:(株)NX総合研究所
2025年度で既に14万人以上不足とされていますがまだ大丈夫です。
現場の人間だからこそ分かる事ですが、運送業はまだまだ無駄の多い業種です。なので効率的に輸送を行っていけば1年や2年の間ですぐに輸送力が落ちる事はありません。
しかしながら、2030年以降はトラックドライバー数が厚い年齢層の人達がまとまって引退していくので、年々と輸送力が落ちていき、今までの様に荷物が届かくなり経済に少しずつ影響が出てくるでしょう。
物流クライシスが深刻化した場合の最悪のシナリオ
最後になりますが、物流クライシスはただ単に「荷物がなかなか届かない」という軽い話ではありません。荷物が届かないと日本が貧困国にもなり得る話です。
極論を言いますと、物流が崩壊すれば衣食住が満足に行えなくなり生活する事そのものが困難となります。
なので物流は絶対に崩壊させてはいけません!
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