トラックメーカーのいすゞ(ISUZU)から国内で初となる普通免許で運転出来るディーゼルエンジンのトラック「エルフミオ(ELFmio)」が2023年7月30日から発売されました。
(下画像参照)
※当記事にあるエルフミオの画像は全ていすゞの公式サイト「ISUZU:エルフミオ(普通免許対応小型トラック)」から引用しています。また仕様の詳細を知りたい方は公式サイトを参照して下さい!
開発された目的は、トラックドライバー不足の解決に貢献を目指すというものです。
現状では物流や建築で使用されているトラックは、ほぼ最大積載量が2t以上のトラックなので、現普通免許(平成29年3月12日以降に普通免許を取得した方)の方が、何らかのきっかけでトラックドライバーになりたいと思っても、運転免許の壁で諦めてしまう方も中にはいる筈です。
実際にトラックドライバーの求人では現普通免許の場合は採用不可としてしている会社もたくさんあります。
そこで会社がエルフミオを導入する事により、現普通免許の方でも採用する事が可能となるのでトラックドライバー不足の解消に期待が持てるという事です。
ではエルフミオはどの様な仕事で使用されるのでしょうか?
本記事では現役トラックドライバーである私がエルフミオの仕様(最大積載量、荷台の大きさ等)を元に、どの様な仕事で使用される可能性があるのか現場目線で紹介していきます。
エルフミオやトラックドライバーの仕事に興味がある方は参考にして下さい。
エルフミオはどんな仕事で使用されるのか?
ここではエルフミオがどんな仕事で使用される可能性があるのか紹介します。
まずはエルフミオの荷台を見てみましょう。エルフミオにはトラックの用途に対して3種類のタイプ(架装)があります。(下画像参照)
【平ボディ】
【箱車(ドライバン)】
【ダンプ(電動ダンプ)】
ちなみに最大積載量は1t~1.3tの間です。イメージしやすい様に他の車と比較すると最大積載量はバン(普通車)のハイエース(トヨタ)やキャラバン(日産)とあまり変わりません。
荷台のサイズと最大積載量から、どの様な仕事に適性があるのか表でまとめました。
【エルフミオと仕事内容の適正】
仕事内容 | 適正 | 架装のタイプ |
宅配便 | ◎ | 箱車 |
重量物の企業間配送 | × | 箱車 |
軽量物の企業間配送 | 〇 | 箱車 |
引越し(一人暮らし) | ◎ | 箱車 |
建築現場の資材運び | △ | 平ボディ |
建築現場の土砂運び | × | ダンプ |
エルフミオは体積の割には軽い物、つまり密度の低い荷物を運ぶのには適していると言えます。具体的に言うと宅配便、軽量物の企業間配送、一人暮らし用の引っ越しにはかなり使えると考えられます。
既に軽トラ、軽バン、普通バン(ハイエース、キャラバン)を使用している様な仕事なら、道幅や高さに問題無ければエルフミオもすぐに活躍出来ると考えれます。
建築現場の資材運びに、あまり向かない理由としては長さと最大積載量が中途半端な点です。建築資材は長物が多く、重量がある物(密度が高い物)が多いからです。
またエルフミオのダンプに関しては画像を見れば分かると思いますが、荷台のあおりが浅すぎて実務ではあまり使えないと考えれます。(おそらく積載オーバーを防ぐ為)
レンタカーやリースでは重宝される可能性有り
エルフミオはレンタカーやリース会社ではかなり重宝される可能性があります。
レンタカーやリース会社では運転免許の壁で以下の様に、借りたい人に貸せなかった例が過去にあったと考えられるからです。
エルフミオは「だれでもトラック」と言う様に、現普通免許(AT限定)の方であっても運転出来るので、導入する事によってレンターカーやリース会社は運転免許の壁による機会損失を減らせる可能性があります。
エルフミオと2tトラックを比較
ここでは、エルフミオと一般的な2tトラックを比較してみます。
2tトラックが活躍出来る場は、4tトラック(中型トラック)では入れない様な所です。具体的に言うと敷地が狭い建築現場や物流施設、また住宅街の様に狭い道を走らなければならない時にはよく使用されます。
2tトラックは物流業界や建築業界ではかなり便利な車両です。と言うのも2tトラックには小さなサイズから大きなサイズまで結構幅が広いからです。
ではエルフミオと一般的な2tトラックを比較してみましょう。
【エルフミオと2tトラックの比較】
エルフミオ | 一般的な2tトラック | |
最大積載量 | 1,000kg~1,300kg | 約2,000kg~3,000kg |
車両総重量 | 3,435kg | 5,000kg未満 |
車幅 | 1,620mm | 約1,700mm~2,200mm |
全長 | 4,685mm~4,840mm | 約4,700mm~6,400mm |
小さいサイズの2tトラックとエルフミオを比較してみても全長と車幅があまり差が無い事が分かるでしょう。
しかしながら最大積載量にはかなり差があります。この差を生むのは車両総重量です。
⇒最大積載量=車両総重量ー車両重量ー乗車定員×55kg
また2tトラックには大きなサイズ(車長が長いタイプ)もあるので建築現場に使用する様なやや長めの物を運ぶのにも適しています。
この様に2tトラックは既に幅広く使用されているトラックですが、現普通免許で運転出来なくなってしまったのは、2tトラックを使用している業界や会社にとっては本当に痛手です。
エルフミオは、現普通免許でも運転出来る様に限られた制限(車両総重量:3.5t未満、最大積載量:2t未満)の中で、何とか実務レベルで使用出来る様に開発されたディーゼルエンジンのトラックです。
トラックにはなぜディーゼルエンジンが多いのか?
実を言うとガソリン車のトラックであれば現普通免許でも運転出来る小型トラック【ダイナ(トヨタ)】はあります。ところがあまり普及していません。
積載性能が中途半端という事もありますが、一番の理由としては「ガソリン車のトラックはコスパが悪い」事が考えられます。
これらの理由から、多くの会社はガソリン車よりもディーゼル車のトラックを好みます。
現普通免許でも運転出来るディーゼルエンジンのトラックなら、若い人の採用に力を入れている会社はエルフミオを積極的に導入するでしょう。
エルフミオは4WD設定も追加予定
エルフミオは4WD設定も追加する方針だそうです。
4WD設定があるなら更に需要が増えると考えられます。
軽トラ、軽バン、バン(ハイエース、キャラバン)には4WD設定がある事により、今仕事でこれらの車両を使用している理由として4WDを重視している状況で荷台・荷室の広さに不便さを感じている状況なら、上位互換としてエルフミオに乗り換えると考えらます。
また、現行の2tトラックには4WD設定があるトラックが少ないので、エルフミオに4WD設定が追加されれば差別化を図れると考えらます。
トラックは小さくなる程、悪路(雪道、山道等)を走る機会が増えるので4WD設定は重宝される筈です。
エルフミオの残念な事としてMT設定が無い
最後になりますが、私の個人的な感想として現仕様のエルフミオの残念な点としてMT設定が無い事です。
MT設定があれば「だれでもトラック」というキャッチフレーズから外れてしまいますが、個人的にはトラックにはMT車があった方がよいと思っています。
エルフミオからトラックドライバーを始める方の中にも中型トラック、大型トラックにキャリアアップする人も出てくると思うので練習用としてMT車を入れたいという会社も出てくるでしょう。
何故かと言うと、特に中型トラック、大型トラックのAT車は、まだまだ開発途上で完成度が低いのでMT車を選ぶ会社がたくさんあるからです。
例えばエルフミオを10台入れるとしたら最低でも1台はMT車があっても無駄にはならないでしょう。
MT設定が追加されるかどうかは分かりませんが、現場目線で見た場合はMT設定はあった方が良いと思っています!
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